排卵障害とは何らかの事情で排卵が正常に行われていないことを指します。
卵巣機能障害
排卵障害の代表的なものが卵巣機能障害です。月経が終わると、女性の体内ではエストロゲンというホルモンが増加します。しかし卵巣機能障害の場合には、このエストロゲンが増加していない状態です。エストロゲンが増加しなければ卵子が育ちにくくなります。そのまま育たなかったり、中途半端なサイズの卵子が排卵されることになり不妊の原因になってしまうのです。エストロゲンが自然に増加しない場合には、排卵誘発剤をつかって排卵を誘発させるという治療が行われます。
高プロラクチン血症
プロラクチンとは母乳を出すためのホルモンです。ですから、通常このホルモンが分泌されるのは産後の母体です。授乳中の母親は妊娠しにくいといいます。これはこのプロラクチンが多く排出されているからです。
プロラクチンが多いとき、体は赤ちゃんに授乳するための身体になっていますから排卵が起こりにくくなりますし、受精しても着床しにくくなるようになっています。高プロラクチン血症というのは、産後でもないのに、こうした状況になっている病気です。
高プロラクチン血症は女性だけに起こるものではありません。実は男性もなることがあります。男性の場合の原因は主に薬の副作用で起こるそうです。たとえば、アルコールを摂取したあとに、胃腸薬を飲むと、プロラクチンの分泌が促されてしまいます。男性にも関わらず、授乳をするためのホルモンが増えてしまうのです。もちろん、男性ですから、このホルモンの影響を受けても母乳が出ることはありません。ちょっとくらいプロラクチンが多くても、造精機能にも影響がでないことがほとんどですが不妊症の治療を行うときには、注意が必要になります。
治療法はプロモクリプチオンと言う経口薬を利用します。この薬を飲むことで、プロラクチンの分泌が通常まで落ち着けば妊娠しやすい体を手に入れることができます。
多嚢胞性卵巣症候群
月経不順で悩んでいる人、排卵障害の状態にある疾患で最も頻度が高いのが多嚢胞性卵巣症候群と呼ばれるものです。これは何らかの事情で卵子が成熟することができなくなっておりこのため排卵が正常に行われないというものです。排卵が正常に行われないため、卵巣の外側の膜が暑くなってしまい排卵が更に起こりにくくなるという悪循環になります。多嚢胞性卵巣症候群の人は、肥満、無月経、頻発月経、多毛症などを併発していることがあります。
無月経や頻発月経は肥満が原因になっていることも多いです。BMI値が肥満という数値を示している人は、まず運動と食事制限で体重を落とすところから始めましょう。自然に排卵障害が改善されることもあります。
多嚢胞性卵巣症候群の治療法として、ホルモン療法があります。ホルモンを投与して卵子を成熟を促し、排卵を促進するという治療法です。ただし、卵巣の外側の膜が厚くなってしまっている場合にはせっかく排卵しても皮が破れずに排卵できないということがあります。この時は次のステップである卵胞穿刺という治療法を行います。これは針を使って卵胞にいくつかの穴をあけるという治療方法です。
性腺刺激ホルモン分泌障害
性腺刺激ホルモンというのは、卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモンのことを言います。この二つは脳下垂体から分泌されるホルモンで、これが分泌されることで排卵が起こるという仕組みになっています。しかし何らかの事情で脳の中枢神経に異常が起きているとき、性腺刺激ホルモンの分泌が悪くなってしまいます。すると排卵が止まってしまうのです。排卵が起こらない、無排卵月経などの症状を引き起こす障害です。この障害には軽度と重度があり、軽度の場合には治療はそれほど難しくありません。しかし重度のケースでは治療が難しいということがあります。排卵誘発剤か月経周期誘発法で治療を行います。
黄体化未破裂症候群
卵子は正常に成熟しているにも関わらず、何らかの理由で外に出ることができないとその卵子はいずれ黄体化してしまいます。基礎体温ではまるで排卵がきちんと行われたかのように体温の変化がありますが実は排卵は起こっていないというものです。基礎体温をきっちりつけていて、きちんと体温変化があるにも関わらず妊娠できないという場合には、疑いがあります。超音波検査を行い、卵胞に針で穴をあける治療が行われます。
心因性の無排卵
排卵はないのに、特に調べても原因が見つからない、ということがあります。この場合、考えられる理由は心因性のものです。
人間の身体とはとても不思議なもので、心が不安定なときには排卵が起こらなくなってしまうということがあるのです。心の調子がよくないから、ホルモンバランスが崩れてしまい、排卵できなくなります。
原因は、仕事が忙しすぎる、人間関係で問題を抱えている、嫁姑問題、家庭内のごたごたなど様々です。一見、ストレスと排卵は無関係に見えますが、実は密接なつながりがあるのです。
仕事が忙しすぎた人が、転職して仕事量が減ったら妊娠したという話もあります。嫁姑関係でぎすぎすして悩んでいた人が別居したらあっさり妊娠したという話もあります。妊娠したいのにできないと思い悩みすぎていた人が、諦めて養子を貰ったら妊娠したという話も聞きますね。もし心因性の無排卵と診断されたときには、まずストレスの原因を取り除かなければいけません。
また心因性の無排卵に伴って、自律神経失調症が起きていることもあります。頭痛、めまい、冷え、動悸、腹痛などです。ストレスへの耐性というのは人それぞれ異なります。
元々ストレスに弱く、悩み安い人、細かいことを気にしやすい人、不安を感じやすい人は特に心因性の無排卵になりやすい傾向があります。
心因性の無排卵はゆったり構えることが大事です。ただでさえストレスが大きいところに「妊娠できない」というストレスまで加わると心の負担は更に大きくなってしまいます。まずは心の問題を解決するのが先決ですから、カウンセリングを受けるのも良いでしょう。
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