人工授精について
人工授精は実はそこまで難しい治療法ではありません。なんとなく高度治療と考えている人が多いのではないでしょうか?
人工授精とは
本来、セックスという行為で精子は女性の子宮内にたどり着いて受精卵になります。しかし何らかの理由で射精が上手く行かないときに、精子を事前に採取しておき、それを器具使用し女性の子宮内に注入するというものです。
つまりセックスをしていないだけで、妊娠自体は自然妊娠ということになります。この時注入される精子は洗浄・濃縮されていますし、排卵していることを確認してから注入されますから、より妊娠しやすくなるのです。採取した精子は子宮内に入れるIUIという方法が主流です。卵子に近い位置に入れる方法もあるのですが、妊娠率が変わらないということでより負担の少ないIUIが採択されるのが一般的となっています。
人工授精で使われる精子は基本的に配偶者間のもので、これをAIHと言います。非配偶者間で行う人工授精はAIDといい、区別されます。1文字違うだけで、意味が大きく変わります。AIHは射精に何らかの問題があるときに比較的初期に行われる不妊治療ですがAIDは最終手段とも呼ばれるものです。
人工授精を受ける時の準備と手順
- まず基礎体温を測りつつ排卵日を予測し、排卵日が確定したら当日に人工授精を行うスケジュールを組みます。
- 男性は4~5日前から禁欲しておきます。
- 前日には夫婦共にリラックスした気持ちで、体を休めておきましょう。
- 睡眠不足になるのは良くないので、少量のお酒や睡眠導入剤などを使用しても問題ありません。
- 緊張すると眠れなくなるという人は、あらかじめお医者さんに相談しておきましょう。
- 精子は当日の朝に採取します。
- 病院で採取するか自宅で採取して2時間以内に病院へいきます。
- 採取した精子を1時間ほどかけて洗浄と濃縮をします。
- 女性はその間に、精子を注入する準備をします。
- 精子の準備ができたら、人工授精が行われます。
- 人工授精自体は1分程度で終わる簡単な処置です。
- 病院によってはその後20~30分安静にしておき、帰宅許可が出たら帰宅します。
- 1~2日間、抗生物質を飲んで感染症を予防したら完了です。
人工授精後はどんな風に過ごせばいい?
受精後にはできるだけ、のんびり過ごすのが良いでしょう。すぐに激しい運動をするのは控えてください。日常生活なら何をしても問題ありませんし、入浴もOKですが過度のストレスは良くないので、期待しすぎずにのんびり構えているのが良いです。
受精後、微量の出血が起こることがあります。しかしこれはまったく問題のない出血ですから安心してください。何日も出血が続く、大量の出血がある、発熱や下腹部痛があるときにはすぐに病院へ行きましょう。
基礎体温は受精後も毎日チェックしましょう。高温期が3週間以上続いたら妊娠している可能性が高いです。
人工授精の成功率ってどのくらい?
人工授精の成功率は5~10%程度と言われています。つまり平均して5回~6回チャレンジしてようやく妊娠する人が多いということ。中には10回チャレンジしても成功しないと言う人もいます。
妊娠がしたくて不妊外来に通っているのに!!という焦りは理解できますが1回2回で諦めるのは良くないです。精子の運動率とい女性の年齢に問題ない場合には、10回人工授精にチャレンジして妊娠すればいいな、くらいの気持ちでいると良いでしょう。
というのも、人工授精は痛みも体への負担も、費用も他の不妊治療とは比べ物になりません。失敗が続くと「このまま妊娠できないのでは?」なんて落ち込むこともあるかもしれませんが、そもそもそれほど成功率が高いわけではないので、焦らずにチャンスを待ちましょう。
人工授精の費用はどのくらいかかる?
人工授精に掛かる費用は病院ごとに違いますし、その人それぞれの状態によって異なりますが相場では1回あたり1万円~2万円です。人工授精には手数料だけではなく、必要に応じて超音波検査や排卵誘発剤などの費用がかかります。
このくらいの値段なら年額20~40万程度の負担ですから、毎月の収入からやりくりすることもできるのではないでしょうか?体外受精になると治療費は更に高くなりますから何回まで人工授精にチャレンジするかなど、夫婦でよく話あっておきましょう。
体外受精について
1978年、世界で初めて体外受精の赤ちゃんが生まれました。それから約30年が経ち、年間2万人を超える赤ちゃんが体外受精で生まれるようになりました。近年、体外受精は決して特殊な治療法ではありません。しかし、まだ体外受精について詳しい知識を持っている一般の人は少ないというのが現状です。
体外受精では、最初に卵巣から成熟した卵子を取り出し、男性から採取した精子を培養液の中で受精させます。無事に受精したら受精卵の状態を見ながら卵を培養し4分割から胚盤胞まで育てます。ここまできたら、受精卵を注入器で吸い取って、女子絵の子宮へ移して着床させます。無事に着床すれば妊娠成功となります。一般的な成功率は30~35%なので、必ずしも成功するとは限りません。数回やっても妊娠できないというケースも珍しくはありません。
体外受精が行われるのは卵管障害があるケース、排卵障害があるケース、男性因子によるものなど色々です。
体外受精するかどうかを夫婦で検討しよう
晩婚化や女性の社会進出などもあり、女性の妊娠しにくい生活環境が浮き彫りになる現代ですからなるべく早く妊娠したいと思う気持ちも一入でしょう。年齢も年齢だし、悠長に人工授精にチャレンジしていられない。自然妊娠したいという気持ちはあるけれど、わずかな希望にかけるよりも少しでも早い妊娠をしたいという相反した気持に悩む人も多いのではないでしょうか?
体外受精は、人工授精が上手く行かなかったときに行うことの多い治療法です。医師のアドバイス通りにタイミング法をためし、人工授精をしてもダメというとき体外受精を進められるのです。
体外受精は40歳以下であれば35%の確率で成功する方法です。不妊治療の中では比較的妊娠しやすい方法とも言えるでしょう。ただし体外受精にはリスクや費用の負担、精神的な負担も大きいものです。今後の治療、リスク、デメリットなども良く考慮した上で体外受精に進むかどうかを医師と相談して判断すると良いでしょう。
体外受精を勧められる人
体外受精は人工授精に比べて妊娠できる確率が高い治療法です。すぐにでも妊娠したいから、すぐにでもチャレンジしたい!と言うわけにはいきません。
体外受精に進むのは、人工授精を5回~7回以上行っても妊娠しないケースや子宮内膜症、卵管閉鎖などのトラブルが見られる場合です。男性の場合では人工授精をさせるのが難しい場合にも体外受精に進むことがあります。しかしいずれにせよ、子宮外来を受診したらすぐに体外受精の治療に進めるというわけではありません。
ただし女性が高齢の場合には人工授精を5回~7回と悠長なことを言っていられないため特に大きな問題がない場合でもすぐに体外受精へと進むケースもあります。
体外受精にいつ進むのか?というのは個人差がありますからカウンセリングを受けたときに、どのくらいのタイミングで進むのかということも含めてよく質問しておくと良いでしょう。
体外受精の具体的方法
体外受精はまず排卵をコントロールするところから始まります。採卵、受精、肺移植という順序で進んでいきます。ただこの手順が必ずしも毎回順調に進むというわけではありません。その時々で卵子は採取できたけれど、受精が上手くいかない場合や受精卵が良い状態まで育鉈いということもあります。その場合は途中で中断して、次回また最初から行うことになります。
1.排卵のコントロール
排卵のコントロールにはいろいろな方法がありますが一般的なロング法という排卵誘発方法で流れをご説明します。体外受精は1周を28日~30日とします。前の周期の21日目頃からGnRHアゴニストという薬(鼻から吸入)を使って排卵の時期をコントロールしていきます。同時に卵子の質を高めるためにピルも服用します。月経開始すると3日目から排卵誘発剤を使い出し、コントロールしつつ卵子を成熟させていきます。
2.超音波検査
排卵誘発剤と同時に行っていくのが超音波検査です。これは前胞状卵胞を測定するための検査です。また卵巣と下垂体のホルモン状態を調べるために採血検査も行われます。卵子の成熟度を観察するため、体外受精をするための期間に入ったら2日に1回は通院しなければいけなくなります。
3.hccを注入する
超音波検査をした結果、卵子が直径18㎜まで成熟してきたら、採卵の準備に入ります。排卵を誘発させるhccを注射して、その後36時間~40時間後に採卵をします。下腹部に痛みを伴うことがあるので、安静にしておけるようにスケジュールを組みましょう。
4.採卵する
採卵する時には痛みを伴いますから、麻酔をかけます。このため前日の夜10時効は飲食禁止の絶食となります。翌日午後まで水を含めて一切口にすることができません。採卵当日は指定された時間に病院に行きます。男性も一緒に行ける場合には、その場でマスターベージョンをして精液を取りますが自宅で精液を取って持って行くこともできます。忙しい場合には精液を摂取してすぐに仕事に行くことも可能です。全身もしくは部分麻酔をして卵子を吸い取ります。所要時間は10分ほどです。処置後は麻酔が解けたら帰宅することができます。ただし安静にしておく必要があるので、動き回らずにゆったりして過ごしてください。少量の出血は問題ありませんが、発熱、下腹部痛が強い場合には医師へ連絡をします。
5.培養
成熟した卵子を採取し、洗浄・濃縮した精子と合わせて培養します。この培養は温度と衛生状態が徹底的に管理されたラボで行われます。成熟した卵子が1個に対して、精子は約5万個注入されます。そして3~12時間の間そのままにして受精を待ちます。
6.受精卵の完成
無事に受精していることが確認できたら、受精卵を子宮に移植することになります。受精卵は約1日かけて4~8分割になったところで移植されます。場合によっては胚盤胞移植といって、2~3日待って移植することもあります。よい受精卵はフラグメントと呼ばれる気泡のような小細胞が少ないものです。
受精卵が複数できた場合には、移植する分以外は凍結保存されます。1回の体外受精で子宮に戻す胚は1個ですが35歳以上の場合には、前回失敗した場合に限り2個戻すこともあります。残った分は次回利用するためにとっておきます。
7.移植
受精卵の中から良質なものを選んで子宮内へ移植します。この移植自体は5分ほどで完了するのですが、麻酔が使えません。痛みを伴う場合もあるので覚悟しておきましょう。処置を受けたあとは2~3時間、病院で横になったまま安静にしておき帰宅します。帰宅後もあまりバタバタせずにゆったりとした気持ちで過ごして下さい。
8.2週間で妊娠判定
胚移植を行ったあと2週間で妊娠判定が出ます。この期間はプロゲステロン注射をしたり黄体ホルモンの補充を行います。数日おきに採血と採尿をして検査をしなければいけないので病院に通うことになります。
排卵誘発法について
体外受精・顕微授精では良い卵子を取り出すために、排卵誘発剤を使って排卵を促します。この排卵誘発剤で卵巣を刺激すると複数の良好な卵子を排卵させられるのです。有名な方法がロング法、ショート法、アンタゴニスト法、自然周期法の4つです。それぞれメリットとデメリットがありますから、卵巣の状態や年齢などを考慮してもっとも適切と思われる方法が採用されます。
排卵誘発法を選ぶ基準となるのが前胞状卵胞です。月経時に卵巣内で確認できる2~5mmほどの小さな卵胞のことで体外受精の周期とその前の周期に前胞状卵胞がどのくらいあるのか、どのような状態かで洗濯する排卵誘発法が変わります。
ロング法とは
もっとも多くの病院で使われる排卵誘発法です。
- 37歳以下
- 体外受精は初めて
- 前胞状卵胞が8個以上ある
- 卵巣刺激の反応が良い
などの条件に当てはまるとき、ロング法が選択されます。
ロング法を行う際には、まず質の良い卵子を育てるためにピルの服用をします。その後、GnRHアゴニスト製剤点鼻薬を使い卵巣を刺激します。これは卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモンの分泌を抑えるためです。体外受精の周期に入ったら、月経1~3日目に超音波検査で前胞状卵胞の数と大きさをチェックし、採血などの検査を行います。検査結果が出たらhMGという注射を定期的に打ちます。卵胞が16~18mm程度になり2個以上確認できたら、hCGを注射します。約38時間経過したら卵子を採取できます。
ショート法とは
受精周期になってから卵巣を刺激するため、短期間で済む方法です。
- 38歳以上
- ロング法で上手く行かなかった人
- 前胞状卵胞が7個以下
- 卵巣刺激の反応が悪い
GnRHアゴニストを使用して性腺刺激ホルモンが大量に分泌されたときを狙って卵胞を短期間で育てると言う方法です。期間が短くて済むので薬の量も少なくて済みます。しかし黄体化ホルモンを大量に分泌させてしまうので卵胞の質が悪くなってしまうことがあります。
アンタゴニスト法とは
効き目の強いGnRHアンタゴニストを使う方法です。
- ロング法が上手く行かなかった人
- 前胞状卵胞が7個以下
- 卵巣過剰刺激症候群(OHSS)の疑いがある人
- 多嚢胞性卵巣症候群の人
GnRHアゴニストの代わりに、より効果の強いGnRHアンタゴニストを使います。強い効果があるため、持続時間も30時間と長いです。hMGの投与量は少なくて済み、卵巣へのダメージが減ります。しかし皮下注射を行うため、痛みが強いというデメリットもあります。
排卵誘発剤を使っていると、ホルモンが大量に分泌されてしまうため卵巣が腫れて肥大化してしまったり、胸水や腹水がたまることがあります。これを卵巣過剰刺激症候群と言います。排卵誘発剤を使ったあとに、お腹に張りを感じる、強い吐き気がある場合は可能性があります。発症してしまった場合には自然に治るのを待ちますが、重症の場合には入院の必要もあります。
自然周期法とは
飲み薬を中心に排卵を誘発させる方法です
- 40歳以上
- 他の方法で上手く行かなかった場合
- 前胞状卵胞が3個以下
- 卵巣の機能が低下している
クロミッドなどの飲み薬を服用した排卵方法です。注射は必要に応じて2,3回することがありますが卵巣への負担を最小限に抑えられます。数個の卵胞を大事に育てるため経済的な負担も少ないです。卵胞の成長具合とホルモン値をみながら適切な排卵日を決定するので低刺激な方法なのです。
顕微授精について
顕微授精をするのはどんなケースか
体外受精でダメだったときに行われるのが顕微授精という方法です。無精子症や欠乏精子症などその他原因不明の不妊症で体外受精をしても受精卵が得られないときに行われるのが顕微授精です。2002年には顕微授精で生まれた子供が5500人となっており高度不妊治療で生まれた子供の約4割が顕微授精で誕生しています。体外受精を何度か行ってもダメだった…というカップルでも顕微授精で子供を授かったケースもたくさんあります。
体外受精の場合には、1個の卵子に対して10万個以上の精子が必要になります。顕微授精では1個の卵子に対して精子が1個で済みます。精子の数が少ないと言う人でも諦めずにチャレンジできる方法なのです。
また、夫婦のどちらかに抗精子抗体があって着床が難しい場合でも顕微授精なら妊娠のチャンスがあります。
精液の中に精子が全くいないという場合でも睾丸から直接精子を取り出すことができるので精子が少ない人でも受精させることができるのです。
顕微授精の方法
顕微授精には複数の方法があるのですが、一般的に使われるのはICSI法と呼ばれるものです。基本的な流れは体外受精と一緒なのですが、採卵のスケジュールや受精のプロセスが体外受精とは若干異なります。これは採卵のスケジュールが旦那さんの精子の状態で変わるからです。精液の中にわずかでも運動精子がある場合には奥さんの排卵スケジュールに合わせることができますが無精子症の人の場合には、睾丸から直接精子を採取しなければならず精子を回収できる確率も3割前後となっています。ですから先に精子を採取し凍結保存し、卵子がムダにならないようにするのです。
体外受精では1つの卵子に5万個以上の精子を同じ容器に入れて受精させますが顕微授精の場合は、医師か培養師が状態のよい精子を1個絵ラボます。そして注入器で動きを止めて卵子を活性化させる物質を放出させたあとあらかじめ固定した卵子の中に注入します。精子を直接卵子の中に注入するため、卵子を突き破る必要もなく、運動力の低い精子でも受精が可能になるのです。
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