ひとくちに”便秘”と言っても色々な種類があるんです。
便秘というと、何日も排便がない日が続いてしまい、お腹が張って辛いものである、と単純に考えている人が多いです。
たかが便秘、されど便秘。
便秘はとても簡単に考えている人が多いのですが、実は原因によって便秘にはいくつも種類があるのです。
中には深刻な病気が隠れていることもあるので注意が必要です。
例えば強い腹痛を伴う便秘もあれば、旅行や出張に行くと排便がなくなってしまう一時的な便秘。
仕事のストレスや極度の緊張から起こる便秘。
生理や排卵日など1ヶ月のうちの特定の期間になる便秘などなど原因に合わせて解消法も異なります。
もしも便秘に悩んでいるなら、まずはあなたの便秘がどんな原因で、どんな種類のものなのかを特定するところから始めましょう。
便秘にはどんな種類があるの?
便秘は大きく5つに分類することができます。
- 機能性便秘
- 器質性便秘
- 便秘型IBS
- 症候性便秘
- 薬剤性便秘
①機能性便秘
機能性便秘は胃や小腸、大腸などの消化器官の機能の異常で起こる便秘です
機能性便秘は大きく排便回数減少型と排便困難型の2種類に分けることができます。
排便回数減少型で起こる便秘
排便回数や排便量が減少して大腸に便が溜まってしまうことで腹部に膨満感を覚えたり、腹痛などの症状がおこります。
高齢者や出産後の女性などに多く、筋力が低下することで便を押し出すことができなくなってしまい起こるのが弛緩性便秘です。
大腸通過遅延型便秘では大便が糞便を輸送する能力が低下しており排便回数や排便量が減少します。
多くはストレスが強く関与しているものがあり、中には甲状腺機能低下症や副甲状腺機能亢進性、糖尿病などが原因となって起こることもあります。
大腸通過正常型ではダイエットで食事量が極端に減った場合や食事に含まれる植物繊維成分が少ないときにおこります。
排便困難型で起こる便秘は?
排便困難型では大腸通過正常型と機能性排便出障害の2つに分けられます。
大腸通過正常型では排便回数も排便量も減少していないにも関わらず、何らかの原因で便が固くなってしまい、排便が困難になってしまう状態を指します。
機能性便排出障害では直腸にある糞便を十分に排出できないことで残便感を感じます。
原因は骨盤底筋協調運動障害や腹圧の低下などがあります。
また仕事などで便意を我慢することが多い方の場合、便意の我慢を繰り返すことで直腸感覚が低下し直腸性便秘になることがあります。
機能性の便秘は過度のダイエット、水分不足、ストレスなど様々な原因でおこります。
人間の体は繊細にできているので便秘を繰り返す場合には生活習慣の見直しから行いましょう。
②器質性便秘
器質性便秘は大腸の腫瘍や炎症などで腸管が狭くなるなど腸そのものに問題があり起こる便秘です
人の身体は摂取した食物を胃、小腸、大腸、肛門と通過して最終的に便として体外に排出します。
この時、大腸に形質異常や疾患があり腸管が狭くなると正常に便が排便できなくなってしまいます。
これが器質性便秘です。
機能性便秘であれば食生活の改善や適切な運動、マッサージや体操などで改善します。
しかし器質性便秘の場合には原因そのものを治療しなくては本質的に便秘が改善することはありません。
器質性便秘の中には深刻な病気が隠れていることもあります。
早期発見が重要です。
生活習慣を見直しても便秘が改善されない場合や下記のような症状が出た場合には病院を受診しましょう。
こんな症状なら器質性便秘かも
もしも便秘以外にも下記の症状があったら要注意です。
- 吐き気、嘔吐
- 激しい腹痛
- 便に血液や粘液が混じる
- 風邪を引いていないのに発熱がある
器質性便秘を起こすのは大腸がん、直腸がん、腹膜炎、腸閉塞、腸捻転、潰瘍性大腸炎、腸管癒着症、大腸ポリープなどです。
大腸がんはかつては日本人にあまり多くない病気でしたが平成15年には女性の死因1位となっており油断できません。
症状としては血便や残便感、下痢と便秘を繰り返すなどがあります。
腹膜炎は細菌感染によるもので、虫垂炎や急性胆嚢症など他の病気の合併症としておこります。
こちらも重篤な場合には死に至ります。
何らかの影響で腸管が塞がるので腸閉塞です。
過去に受けた手術の影響、がん、ヘルニアでおこります。
腸捻転も腸がねじれて腸が詰まる病気です。
腸閉塞も腸捻転も一刻もはやく適切な処置を受けなければいけません。
③便秘型IBS
IBSとは過敏性腸症候群といって、下痢や便秘を繰り返すことを言います。
中でも便秘を繰り返すタイプを便秘型IBSといいます。
IBSには、この他にも男性に多い慢性下痢型、混合型、分離不能型(ガス型)の合計4種類があります。
便秘型IBSは女性に多く、数日に一度、硬くコロコロしたうさぎのふんのような便が出ます。
排便は毎日でなくても、スムーズに2日に1回、3日に1回とコンスタントに出ていればあまり問題にはなりません。
しかし便秘型IBSは4,5日以上排便がなく腹痛や腹部膨満感を伴います。
慢性下痢型と違って急な便意でトイレを探し回る、会議の最中に下痢を我慢するのに苦しむことはありませんが、排便のたびに非常に苦しい思いをします。
しかも便秘型IBSは市販の便秘薬も効果が薄いのです。
便秘型IBSは女性に多い
便秘型IBSは先進国の女性に多い病気です。
日本人では女性の10~15%が便秘型IBSだと言われます。
つまり10人~15人に1人が苦しんでいることになり決して珍しいものではありません。
発症年齢は最も高くなるのが20~40代です。
便秘型IBSが起こる原因ははっきりと特定されているわけではないのですが、多くが自律神経の乱れによるもので、ストレスが大きく影響していると考えられています。
先進国では女性が社会に出て働くケースが増加しており、それに伴うストレスで排便習慣が乱れ、増えていると考えられます。
症状を改善したいのであれば、ストレスから解放されることです。
長期旅行、引っ越しなどの環境の変化やストレス、働きすぎ、不規則な生活などはストレスにつながります。
適切に休息を取ることが重要になります。
④症候性便秘
便秘にはいくつか種類がありますが中でも何らかの病気が原因となって便秘が続く状態を症候性便秘といいます。
便秘が苦しくてつらいというのは症状の一つで、実はもっと深刻な病気が体内で起きていることを示しています。
つまり症候性便秘だった場合には生活習慣を改善しても便秘は解消されません。
便秘を改善するためには1次的疾患を治療しなくてはいけません。
症候性便秘に似たものに器質性便秘があります。
器質性便秘は胃、腸、肛門など消化管に異常があることですが、症候性の場合には消化管以外の原因も含みます。
症候性便秘は自分で「あっ、この便秘は症候性便秘だ」と感じるものではありません。
些細な兆候を見逃さずに自分の便秘がどんな理由で起きているのかを検討し、少しでも異常を感じた場合には医師の診断を受けるべきです。
症候性便秘に隠された深刻な病気とは?
症候性の便秘には急性症候性と慢性症候性があります。
急性症候性の場合には腸閉塞や腸捻転などがあります。
慢性症候性の場合には徐々に症状が進行します。
例えば子宮筋腫や卵巣のう腫なども腸を圧迫するため便秘を引き起こすことがあります。
また肝臓がん、膵臓がんが原因で便秘が起こることがあります。
珍しいケースではありますが帝王出産で腸管癒着が起こることもあります。
便秘以外にも腹痛、嘔吐感、発熱、頭痛、膨満感、倦怠感、動機、血便、貧血、食欲不振などの症状が起こる場合、単なる便秘ではない可能性があります。
当然ですが、症候性便秘の場合では整腸剤や便秘薬を使用しても便秘が改善することはありません。
一時的に症状が回復しても悪化してしまいます。
便秘だと甘く考えずに病院を受診しましょう。
⑤薬剤性便秘
便秘にはいくつか種類がありますが、その一つに治療薬の副作用で起こる「薬剤性便秘」があります。
病気を治療するために服用している薬の中には便秘を引き起こしやすくする作用を持つものもあります。
病気の治療として処方された薬を飲むようになってから便秘を繰り返すようになったという場合には薬剤性便秘を疑ってください。
風邪薬など数日間服用する程度の薬であれば便秘が起きても特に大きな問題はありません。
症状が収まってから薬の服用をやめれば便秘も自然に改善されます。
慢性的に服用する薬の場合には注意が必要です。
薬の服用を中止すれば薬剤性便秘が改善されることがありますが、病気の治療に必要だから処方されている薬ですから安易な自己判断で使用を中止するのは良くありません。
必ずしも、薬の副作用で便秘が起きているとは限らないため主治医と相談の上で薬の服用を中止、及び変更を行いましょう。
どんな薬で薬剤性便秘が起こるのか
薬剤性便秘を引き起こす可能性があるのは以下の通りです。
・麻薬性鎮痛剤
がんによる痛みを抑えるために使用されるモルヒネやオキシコドン
・鎮痙剤
アルカロイドの作用で消化器官の痙攣に寄る痛みを抑える薬です。
・鎮咳薬
風邪をひいたときに服用する咳止めです。
市販のものを含めてほとんどの薬に「リン酸コデイン」や「リン酸ジビドロコデイン」が含まれており、腸の動きを鈍くします。
・抗コリン薬
副交感神経を抑制する抗コリン薬は気管の拡張、下痢止め、抗パーキンソン薬や多汗症など広く使われます。
・抗うつ剤、抗不安薬、睡眠薬、気分安定剤など
精神疾患の治療に使われる薬には神経に作用して精神疾患の症状を和らげますが便秘の副作用を起こすことがあります。
・鉄剤
貧血や妊婦に処方されることの多い鉄剤は便秘を引き起こすことが多いです。
一般的に「便秘」と言った場合、機能性便秘のことを指します
排便が3日以上ないとき。
便が硬く排便に苦痛を伴うとき。
こうした状態にあるとき一般に「便秘」といいます。
そして便秘と言った場合、ほとんど機能性便秘を指しています。
20代以降の多くの女性が苦しんでいるのが機能性便秘です。
男性に比べて女性は筋肉量も少なく、腸の蠕動運動が弱いことや、生理によるホルモンバランスの変化、妊娠出産などによるホルモンバランスの変化、更に食生活の好みや量、ダイエットなどから便秘になりやすいのです。
多くの場合は便秘気味であっても問題ありません。
生理の前になると便秘になるというなら理由は明らかですし、食生活の改善などで十分に対処可能です。
便秘気味な方は生活習慣の見直しや食生活の改善から取り組んでみましょう。
機能性便秘チェック!当てはまる数が多い人は要注意
以下の項目に当てはまる数が多い人は機能性便秘の可能性が高いです。
日頃の生活を見直してみましょう。
あまり水分を摂取しない
→水分不足は便を硬くするため便秘になりやすくなります。
運動しない
→筋肉量が減ると腹圧が減り腸の蠕動運動が弱くなります。 腸への刺激が弱くなるため便秘になりやすくなります。
ダイエット中である
→食事量が減れば便の元になる材料が減るので便秘になりやすくなります。
洋食が好き、野菜をあまり食べない
→野菜に含まれる食物繊維を摂取していないと便秘になりやすくなります。
ストレスが多い
→自律神経が乱れて腸の蠕動運動が低下します。
トイレにいけないことが多い
→便意の我慢を繰り返すと、直腸が便意に鈍感になり便秘につながります。