PMSが起こる理由とは
PMSという概念が初めて報告されたのが1931年のことです。それ以降、欧米を中心として人間科学、心理学、精神医学など様々な観点からPMSについての研究が日々進められています。しかし、なぜPMSが起こってしまうのか?これは明確な答えが出ていないのです。
なぜ明確な答えが出ないのか?これはPMSの症状に個人差が大きすぎるからです。具体的にこんな症状が起こります、という症状は150種類以上見つかっており、人によって重さが全然異なります。
ただ、はっきりと特定されたわけではないものの、ホルモンバランスの変化が原因で起きると考えるのが一般的となっています。排卵から生理にかけて、女性はホルモン分泌が大きく変わる時期です。この変化に対応しきれなかった結果がPMSと考えられているのです。
エストロゲンやプロゲステロンが分泌したり、セロトニンが分泌異常を起こすとPMSが起こるとされています。PMSで苦しんでいるとき、ホルモンは憎たらしくも感じられますね。
しかし逆にかえせば、ホルモンの変化がきちんと起こっていることの証拠でもあります。排卵がきちんと起こり、毎月生理が来ているからこそPMSが起こるのです。
ホルモンは大脳の直下にある脳下垂体や臓器で合成されます。視床下部でコントロールされて、体中をめぐります。そして臓器や組織に特定の働きをさせるのです。ホルモンは厄介ですが、生殖活動が機能するために必要不可欠な存在です。ホルモンの変化が起こるからこそ、私たちの身体は赤ちゃんを宿すことができるのです。
ホルモンの種類と役割
PMSの一番の原因とされているのがホルモンバランスの変化です。このホルモンというのが3種類。
- 卵胞刺激ホルモン(FSH)
- 黄体化ホルモン(LH)
- 乳汁分泌ホルモン(プロラクチン)
です。
特に問題になるのがFSHとLHです。まず、ホルモンの働きを見ていきましょう。
脳下垂体はFSHを分泌させることで卵巣を刺激し卵胞がエストロゲンを分泌します。すると師匠下垂体に伝わり、LHを分泌させ排卵を促します。再び刺激された卵巣はプロゲステロンとエストロゲンを分泌させ、子宮内を妊娠するための環境を作ります。妊娠しなかった場合には、2週間以内にこの二つのホルモン分泌は止まり、脳下垂体に伝わりFSHとLHの分泌を停止するように指令が下ります。
少々ややこしい話で理解が難しいかもしれませんがホルモンの役割を分かりやすく例えるとメールのようなものです。視床下部から様々な期間に「こういう働きをしなさい」「こういう動きをしなさい」とメッセージを送っているのです。そして受け取った期間はその指示に通りに働き、そしてまた別のところへメールを送ります。
PMSはエストロゲンとプロゲステロンの濃度が急激に増減することで起こります。エストロゲンには興奮を抑える働きがあり、増加すると脳の血管が拡張して片頭痛などの原因になります。プロゲステロンは水分をためる働きがあるため、増加するとむくみやすく便秘になります。
また妊娠が成立しないとエストロゲンとプロゲステロンの分泌量が低下し、自律神経系や循環器系、消化器官系などがコントロールできなくなり、様々な期間に影響が出るのです。
ホルモンが循環器系に与える影響
エストロゲンとプロゲステロンが循環器系に影響を与えるとどうなるのか?まず、血行が悪くなってしまうことで、頭痛や肩こりが起こります。この他にも体のだるさを感じたり、朝起きられなくなってしまうなど体調不良が起こります。
また、消化器官に影響を与えれば腸のぜん動運動が悪くなります。すると便秘や下痢などが引き起こされ、免疫中枢に影響を与えればアレルギー反応を起こしやすくなります。
そもそも視床下部は食欲や性欲、集団欲などを司っています。ここの働きが鈍くなってしまえば、暴飲暴食などをしてしまったり、性欲が増進・減退してしまったり、人とのかかわりが面倒になってしまったりします。視床下部は情動の脳と言われる器官のため、生理の前1週間~2,3日前には情緒不安定になってしまうのです。
この他にもPMSの原因とされているホルモンはあります。子宮内膜からはプロスタグランディン、副腎皮質からはアルドステロン、そして妊娠中に分泌されるプロラクチンもPMSの原因になると言われます。
プロスタグランディンは生理の前、生理時に多く分泌されるホルモンで血管を収縮させ頭痛や肩こり、手足のしびれや冷えなどを引き起こします。胃腸のぜん動運動を動かすため、吐き気や胃痛、下痢などの原因ともなります。
アルドステロンは体のむくみを起こします。プロラクチンは妊娠中以外でもストレスを感じると分泌され、胸が張ったり、生理のサイクルを乱します。このようにさまざまなものがPMSの原因となっているのです。
セロトニンの不足もPMSの原因の一つ
PMSがなぜ起こるのか?様々な原因と要素が複雑に絡み合っているのですがセロトニンが異常に低下してしまうことも一つとして考えられています。
セロトニンとは幸福ホルモンと言われるほど人を明るく楽しい気持ちにさせる働きを与えるホルモンなのですが、生理前にエストロゲンとプロゲステロンが急激に減少するとセロトニンが混乱してしまい、異常に低下してしまうことがあるのです。幸福を感じるホルモンが減少することで、不安や憂鬱、後ろ向きな感情などが起こりやすくなるとも考えられているのです。
セロトニンの減少はエストロゲンやプロゲストロゲンとは全く無関係にストレスが過剰になると減少してしまうことでも知られています。
仕事での責任が重い、密室育児で行き詰っている。嫁姑問題で大きなストレスを抱えているなど日頃からストレスを感じており、ストレスへの抵抗が弱い人の体質の場合、ただでさえセロトニンが減っています。
更に生理の前にホルモンの影響を受けてセロトニンが減少してしまうことで欠乏状態となり、心理トラブルが悪化しやすくなってしまうのです。また、PMSで不安定になることが更なる不安定につながりどんどんと悪循環へ至ってしまうこともあります。
心理的なトラブルを感じやすい人は日頃から基礎体温を記録し、排卵後にホルモンの変化に注意をしておくと良いでしょう。生理の1週間前から2、3日前はプロゲステロンとエストロゲンの両方が減少し、それに伴ってセロトニンも減る、と知っておけば余計に落ち込むことを防ぐことができます。
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